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Vol.9 三亀 南條勲夫さん

Vol.9 三亀 南條勲夫さん 昨年秋には、「ミシュランガイド東京2008」が出版され、都内のレストランは、その本の評価に翻弄されたことは、記憶に新しいと思います。
本日、インタビューをお引き受け下さる、ここ「三亀」さんも、ミシュランに掲載されているお店のひとつですが、ご主人である南條勲夫さんのお人柄、おもてなしの心、お料理へのこだわりは、ミシュランに評価される以上に、銀座の誰もがご存知です。
今回は、銀座で最も信頼される人と言われている南條さんへ、銀座への思いなどを、じっくりと伺いました。
では、リレーインタビューの第9回、どうぞお楽しみ下さい

 

1. 銀座は小さな一級品のダイヤの集まり
2. ピンク産業の流行(はや)らない街・銀座
3. 絶品の黒豆とぜんまい!
4. 居心地の良さはお客様が作る

 


 
1.銀座は小さな一級品のダイヤの集まり

グルたま(インタビュー担当スタッフ:以下同):本日はよろしくお願いいたします。いきなりの質問ですが、単刀直入に伺います。南條さんから見て、銀座はどんな街ですか。
南條(敬称略:以下同):ひと言で “本物志向”。バブルの崩壊以降は、安い居酒屋などが増えていますが、本来の姿は「小粒で光っているダイヤのような専門店の集まり」と思っています。

 

グルたま:なるほど、すごく分かりやすくて良い表現ですね。また、長い間銀座をご覧になってきた中で、これは守っていきたいなと思うものは?
南條:和の文化、日本伝統の文化ですね。西洋に駆逐されて減ってきているようですが、良い意味での形式文化が、日本にはあるはずです。

 

グルたま:例えば…。
南條:お店は、みんなクリスマスの装飾はするけれど、門松を立てるところは少ないですね。そもそも正月と結婚式は、金銀の水引を用いた装飾をする訳で、就職や一般のお祝いに使う紅白より、格上の色づかいになる。そういったことも今の人は知らない。お祝いで使う“のし袋”は、水引で結界が引かれていて、ここから上があなた様、下が私となる訳です。一目でわかる、これは日本の文化なのでしょうね。

 

グルたま:なるほど~。
南條:正月の15日に、羽子板とつくばねの帯をしめて、銀座を歩いているお嬢さんをお見かけしました。これ以上のおしゃれはないなと思って、ストーカーじゃないけど、追いかけていって「素晴らしいですね、ブランドものが束になっても勝てない」と褒めてさし上げました。あの柄は、正月の元旦から15日までしか着られないものですからね。こういった、何気ないけれども、文化や伝統を大切にする気持ちを意識しています。

 

 

2.ピンク産業の流行らない街・銀座

グルたま:銀座の街並みはいかがでしょう。
南條:そうですね。他の地域と比べたら、清潔感にあふれていますね。品のないものは並べてないですよね。これは、一人一人の努力の賜物だと思います。

 

グルたま:同感です。そうでないと、お客様に受け入れられないですね。
南條:20~30年前に、銀座にもストリップが出来ましたけれどね。案の定、お客様が入らなくてつぶれましたよ。

 

グルたま:そんなことがあったんですか!
南條:そういえば、年末に、現代風というのか、茶髪の、見かけはちょっとどうかなというような風貌の若者と話したのですが、彼は「忘年会だけは畳の上じゃないと雰囲気が出ない」なんて言ってましたね。

 

グルたま:それは、南條さんとしては、嬉しい言葉でしたね。
南條:いつの時代も、若い人は奇抜な格好をするものなのです。僕の頃は、マンボズボンをはいてましたから。でも、ちゃんと彼らは日本人のDNAを持っているのです。だから西部劇より、チャンバラの方が面白い、って言うのですよ。

 

 

中国のことわざで「その家に老人がひとりいるということは、宝が一つあるということだ」

 

グルたま:それにしても、南條さんは茶髪の青年ともお話しなさるわけですね。
南條:今の時代“会話”が足りないと思うのです。これは、とても大事なことです。コミュニケーションが取れていれば、ピアノの音も騒音にならない。仲が悪いから、ピアノ殺人が起こるのです。
そうそう…、この書をご覧ください。

これは、ある書家に書いてもらったものですが、中国のことわざで「その家に老人がひとりいるということは、宝が一つあるということだ」という意味です。本来、年長者に教わることはたくさんある。この意味で、これからもいろいろなことを伝えたいので、積極的に話しかけていこうと思っています。

 
3.絶品の黒豆とぜんまい!
絶品の黒豆とぜんまい

 

美味しい食材

グルたま:お客様と、いろいろお話しされる中で、“お客様の見るお店”とは?
南條:一に美味しい,二つ目に居心地がいい、そして気配りが行き届いている、ということでしょうか。

 

グルたま:“美味しい”の話題から伺いたいのですが、南條さんの食材などへのこだわりは?
南條:美味しい食材を追求しています。これは当たり前のことですけど。

 

グルたま:具体的にはどういうことでしょう。
南條:あるお肉屋さんで聞いたのですが、「肉の美味しさは、産地だけにこだわらない」って言っていました。この考えに同感ですね。大間のマグロ? マグロは回遊魚ですから、いろいろなところに泳いで行くのです。北緯36度以北なら、良いマグロが獲れます。「大間のマグロ」という名前にこだわる必要はありません。ただし、野菜や果物は、産地にこだわってもいいでしょう。例えば、紀州のミカンは、気候がちょうどいいので皮が薄く、甘み酸味がとてもバランスがいい。気候が暖かすぎると、中身を守るために皮が厚くて、断熱をしてしまいます。

 

グルたま:なるほど、確かににそうですね。
さて、ここで、お約束の“こだわりの一品”をご紹介ください。
南條:まずこれは黒豆、丹波のものを一週間含め煮して作ります。

 

グルたま:これはすごい!ふっくらして、とても大粒なのに水っぽくなくて、味が凝縮されている感じです。一週間も時間をかけるのですね!
南條:美味しくするためには、当たり前のことだと思っています。これは昔の人の知恵ですが、鍋の底に屋根瓦を沈めると、とろ火で長く煮ても、微妙に対流してくれるから、焦げないんです。

 

グルたま:昔の人の知恵に脱帽です。この2品目は?
南條:これは銀座でうちだけだと思います。ぜんまいを採ってから、かまどの灰でもんで干しています。山菜のアクは酸性ですから、アルカリにすれば抜けます。その時、この灰を使うと本当に真っ青になります。

 

グルたま:本当に色がきれいです! しかも美味しい! 来て良かった!
南條:乾物屋にどこから持ってくるのか聞いているのですが、なかなか教えてくれない。でも食材は、上物になるほど専門性が高くなるので、彼らに任せるようにしています。エビ屋さんは、40年エビ一筋ですから、エビを見ただけで、水深何メートルで採れたか分かる。マグロ屋さんは、一目見て、何キロのマグロで、雄か雌かまで分かってしまう。スペシャリストたちとの関係は、とても大事です。

 

グルたま:そして、その食材をいろいろな料理に変えるのが、南條さんという訳ですね。
南條:ただし、間口は狭く、奥行きは深く…をモットーにしています。何事も欲を出してはいけません。そんな気持ちから、和食一筋にやっています。

 

 

 
4.居心地の良さはお客様が作る

グルたま:続きまして、居心地についてですが…
南條:いいお客様がお座りになっていることが、居心地の良さですねよ。

 

グルたま:それは、内装ということではないのですね。
南條:いいお客様のいい会話は、店の雰囲気を良くすると思っています。カウンターで品の悪い会話をされたら、店の雰囲気が悪くなるでしょう。うちではそんな人はいませんが。まあ、私も一家言あるので、某出版社の社長などは、「今度は論破してみせる」なんておっしゃっていますが。

 

グルたま:はじめから、いいお客様ばかりだったわけではないですよね?
南條:先ほども会話が大事だと申し上げたように、お客様とは、会話をするようにしています。そうしているうちに、みんないいお客様になっていくのかもしれません。

 

グルたま:ポイントは何かありますか。
南條:「客上手」という言葉があります。私は、お客様の店に対するマナーというものもあると思うのです。お店に迷惑をかけないように、また、他のお客様にも気を遣うようにと。これを踏み外す人はいけません。お客様がお店を選ぶのなら、お店がお客様を選んでもいいじゃないですか、お客様の居心地のいいお店にするために。
そして、もちろん私たち店側のお客様への気配りは、言わずもがな、ですね。

 

グルたま:南條さん、今日は骨のあるご意見の数々ありがとうございました。これからも「銀座のご意見番」としてよろしくお願いいたします!

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