きっとこのお店を知らない人はいないくらい、銀座では有名な「つばめグリル」。
社長は、我が「銀座料飲組合」の理事長・石倉悠吉さん。
今回お話しをお聞きしたのは、社長の片腕として、
いつの時代でも大勢のお客様に愛される「つばめグリルの味」を
常日頃から追求し、奮闘しているご子息、石倉知忠(ともただ)さんと、
奥様でつばめグリルの内装やメニューなどデザインを手がける、恵美(えみ)さんのお二人。
まずは、ご紹介者:「銀座 吉澤」の吉澤裕介さんから。
「つばめグリルさんといえば、やはりつばめ風ハンブルグステーキが思い浮かびますね。
アルミホイルで包む現在の形で、提供するようになったのが、
1974年からということで、なんと僕と同じ年。
長年のこだわりとノウハウがあの絶妙な味に繋がっているのだなぁと、ますます親しみが湧きました。
石倉知忠さんとは共に銀実会の現役会員として活動していますが、
常に落着いた物腰で、且つ理路整然とした語り口にいつも凄いなと感心させられています。」
では早速、ご夫婦のなれそめをうかがってみました。
妻:現在は企画制作室に勤務しておりますが、
山口県から出てきて美大時代にたまたまバイトしたのが町田店でした。
お仕事は「お料理美味しい」「接客楽しい」「バイトなのにいろいろ関われる」と、
とても楽しいひと時でした。
その後この素敵な空間作りに関われるのならと、就職を考えたのです。
夫:私は、当時新宿に立ち上げた店に勤務した後にその後開店の立ち上げ店舗の
業務指導にかかわり町田、渋谷などを担当し、スタッフの指導・教育もしました。
そんな中知り合いまして、今に至るということです。
銀座の印象をお聞きしたいのですが・・・
夫:弊社の事務所は品川にあって、普段は私は銀座にはいないのです。
弊社の店舗は銀座以外が多いので、働き始めの頃の仕事では
どちらかというと銀座以外のお店に関わっていました。
とあるご紹介で銀実会に入ってからが本当の銀座デビューだと思います。
そこで先輩や同年代の同期達、後輩達から
銀座とは、と言う事を改めて教えてもらっています。
この会では同期は8人いるので、月に一回の飲み会でとにかく盛り上がる!
ただ楽しいだけでなく、お互いの根本を理解し合える相手とのひと時でう。
そしてやる気を増幅させてくれる会で、深い付き合いになっています。
ほかにもいくつかの団体につながりがあり、他業種とのかかわりも多いのですが、
ひとつのエリアでこんなに交流があるのは銀座ならではでしょう。
みなさんおっしゃっているのは
「銀座は本物のみが生き残れる町だよ、本物じゃないとすぐ淘汰されちゃうんだよ。」
ということですね。
このように、商売の本質というか考え方、仕組み、深さについて
真剣にかかわっている人たちが家族や先輩みたいに近くにいらっしゃるのはとてもプラスになります。
妻:大人の町・・という印象で、いまでも敷居高いかなと思っています。
でもお付き合いを通じて感じたことは、
洗練されているものが集まっているところなのに、
皆さん温かいし、身構えていない。
もっと知りたいなと思うことにきさくに答えてくれる、教えてくれる。
話を聞くたびになるほど・・があるし、背伸びをしても入っていきたいと思っています。
「つばめグリル」として、守りたいもの
夫:このことは多分親の刷り込み?受け売り??なのかもしれませんが、
時代の変化の中で「売るもの」が変わっても「理念」が変わってはいけないと思います。
この「変わらぬ理念を商売にしなさい」とずっと言われてきました。
世の中は変わっても長く続く商売に挑戦していきたいと思っています。
食べ物を扱う商売ですので自分達も売る商品に納得し、
その上でお客様も評価して下さるという形が理想です。
しかしながら、これは価格・味などのバランスがからんでなかなか難しいです。
でも自分が納得できている商品を売る事は大切な事だと
思い日々の業務に取り組んでいます。
守りたいものとはちょっと違うのかもしれませんが、
定番のハンブルグステーキでも、変わってないようで常に微妙なマイナーチェンジをしているのです。
変わってないようで変えている、という矛盾を
お客様には直ぐに気付かれないレベルで実施しています。
たとえば肉質を重視するために牛の一頭買いに切り替えたり、
ハンバーグの練り方を変えたり、
肉を挽く時の温度を氷で低温に保ったりパン粉の改良をしたり、
旨味を逃さない為に焼き方の工夫を科学的に検討したり・・・
そしてこのマイナーチェンジを繰り返す為に、
また、自分の納得できるものを提供するために、
お客様と同じ、それ以上に自分の店を含めてよく食べ歩きをしていろいろな事を吸収しています。
妻:つばめグリルのイメージということで言えば、
店内でお客様の目に触れるメニューやポスター、販促物のデザインなどは
その印象において極端に変わることが無いよう気をつけています。
創業以来、画家の鈴木先生が店名ロゴ、キャラクターイラストなどを手がけてきたんですね、
とても温かみのあるイメージで、お客様にもそのイメージが浸透しているので
印象がぶれないように、また長く続くように気をつけています。
食の原点は・・・
夫:やはり原点と言えば家庭の母親になると思います。
母は食事を作るときハンバーグや唐揚げ、和食といったものからパエリアまで
キチンと仕込みをして出来立てを食べさせる事を大切にしていたと思います。
外食ではつばめも含めていろいろなところに行きましたし、全般に「食べる」ことは好きでした。
そんな中、90年代に広尾にあった三笠會館さん経営の“コンチネンタル広尾”での外食は
いままでの「何を食べたい」という選択肢から
「ここで食べたい」と思わせる雰囲気・業態・接客・もちろんみんなとかわす会話まで
一体となったすばらしさを感じたんです。
この店での外食体験がこの仕事はいいな、と思えるようになった店では大変に影響を受けました。
妻:生まれが海の近くで素材が素晴らしい環境でしたので
それだけで美味しかったのを覚えています。
でもこちらに来て、お店で働く間に、しっかりした仕込みや、
もちろん素材の厳選など「美味しさには理由がある」ということを感じさせていただきました。
新しい取り組み、展開は・・・
当店の海外進出は韓国などのオファーもありますが、今のところは東京近郊でがんばっています。
これはやはり目の届くところでキチンと直営で営業したいという考えからです。
しかしながら当該地域での20店舗の展開はすでに飽和状態に近いです。
そこで2000年より続いているチリのプレミアムワイナリー、モンテス社とのつながりのを
基に新しいレストラン業態「カサモンテス」をスタートしました。
星の数ほどあるワインですが、種類・値段などいろいろな要素を考えた場合、
チリのワインは美味しいしとても使いやすく、
しかも品質が高いので「これはいいのでは!」と思ったのです。
後は・・・
今考えたいのは(当店のみならず銀座全体にもいえることですが)
海外からのお客様の取り込みです。
震災以降海外からの旅行者も落ち込んでいますが、
今までいらして下さっていた国内のお客様と同様に今後の重要な顧客層であると考えています。
このあたりに未来の発展があるように思います。
海外の方々とお話をしていると、「洋食」を説明するのはなかなか難しいのです。
ハンバーガーではなく、ハンバーグ。
ハンバーグなのに何故ご飯?
そのハンバーグも牛肉と豚肉の合い挽きで、つなぎも使いますし、
こういった点は海外の方にはすぐにはイメージが浮かばないようです。
最近は洋食も和食の一部という風に捉えていいのかな、
と思いながら「洋食」の認知拡大に努めています。
いつでも、どんな時でも、「つばめグリル」に来れば、
温かみのある店づくりと、お客様への気配り、
手間を惜しまず心をこめたお料理でもてなしてくださること、間違いありません。
思い立ったら、「つばめグリル」へどうぞ。