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Vol.4 GINZA Kansei 坂田幹靖さん

Vol.4 GINZA Kansei 坂田幹靖さん「GINZA Kansei」のオーナーシェフである坂田幹靖さんは、多くの方がご存知のように、青山でフレンチレストランをなさっていましたが、2004年に満を持してこの地銀座に新しい店舗を開業しました。今では、女性客を中心に、銀座でも大人気のお店の一つです。おいしくて安全な野菜にこだわる坂田さんの思いが、お料理にふんだんに盛り込まれているからです。天秤座のAB型ということで、そのお人柄に、興味津々…。第4回のリレーインタビューも、どうぞお楽しみ下さい。

 


 

 


 

 

1.自己表現できる!…料理の世界へ
グルたま(インタビュー担当スタッフ:以下同):まずは、いきなりですが、どうしてこの世界におはいりになったのですか?

坂田(敬称略:以下同):父が公務員で、育った家庭は箸よりフォークになじんでいたような気がします。宮城県の栗駒に住んでいたのですが、18才のころ街のレストランで働いてからフランス料理は自己表現が出来る場だと考えるようになりシェフをめざしたんです。
当時は本を読んだり、ホテルで開かれる食のフェアなどに足を運び、大きな固まりのまんまの牛肉や立食スタイルのさまざまな料理を見たりしました。

 

グルたま:本格的な修業と言うと?

坂田:二十歳を迎えて上京し、お茶の水にある「山の上ホテル」に勤務しました。当時は西洋料理に限らず現在著名になっている方々、京橋の「てんぷら深町」の深町さんや、5丁目に店舗を構える「てんぷら近藤」の近藤さん、「キハチ」の熊谷喜八さんもいましたね。
料理人達はフランスやイギリスへ勉強にいかせてもらい、そこでいろいろな事を学んできていました。バイブルとされた「レペルトワール」やその後のヌーベルキュイジーヌなど、その時代時代の調理のスタイルを持ち帰ってくるので本当に参考になったものです。

 

グルたま:とはいえ修業時代は厳しかったのでは?

坂田:確かに客観的にはつらかったと言えばそうかもしれませんが、私は面白かったと思っています。面白い要素を知ると人間は入り込めますよね。
学ぶ過程ではデュビットに忠実に作りますから、コンソメのジュレにしても分量は守りますが、わかってくるとフォアグラのジュレのゼラチン量をギリギリまで減らしてみたり、魚をブイヨンでゆでたものに野菜で絵を描いたりいろいろ試しちゃうんです。パテやテリーヌなどでも同じようなことをしていました。

 

グルたま:いつごろからそういった自分なりのアレンジをするようになったのですか?

坂田:フランスに行ってから変わりました。そこでは勤めているレストランのオーナーの食事を作るんですが、これが受けるとメニューになったりもします。むこうでは素材に対する考え方がちょっと違っているようで、例えば魚には四季がないんです。高級レストランではいつも高級魚しか使わない、そしてそれをどうデフォルメして他の店と差別化するかが重要とされています。これはもう“美味しさ”の追求とはちょっと違うと思います。そして一貫してオリジナル性の重視!二番煎じは認められません。そういったものに対する評価ははっきり言ってないです。

 

グルたま:フランスでも料理の世界は厳しいんですね。

坂田:国家試験も難関ですよ、15才でレストランに入ると2~3年一生懸命勉強して国家試験に通るとして、ようやくシェフの下働きですし、兵役もあります。
フランスの料理人はバカンスとバカンスの間レストランで働いて、次のシーズンはまた別の店に勤める流れ者のようなスタイルが多くみられます。勤務している間は、シーズンメニューは固定で、次のシーズンはまた別のメニューになるという訳です。月ごとに頻繁に変わることはありません。もちろん定番のグランドメニューはシーズンが変わっても継続されます。

 

グルたま:フランスといえば、フランス料理の本場の地ですが、料理人の実態というか、こんなお話しはなかなか聞けないので、驚きました。

 

 

 

2.銀座への道程
グルたま:こうして銀座へお店を開くまでのお話をお聞きしたいんですが。
坂田:「山の上ホテル」のあと、30才の時に銀座4丁目、今のレカンの裏手にある「レザンドール」というレストランに勤めました。これが銀座デビューと言えますか。
ここには3年お世話になり、いよいよ自分のお店を持つわけですが、銀座は当時バブルの絶頂…とてもそんな状況でなくて物件は青山になりました。思えばここから銀座に戻るまでに20年かかっているわけですね。

 

グルたま:銀座にいらして、あらためて感想はいかかですか?
坂田:そうですね、銀座はこちらの料飲(銀座料理飲食業組合)さんも含めて、横のつながりがあって温かい雰囲気といった印象です。青山はそんなことはなかったですから。

 

グルたま:いいおつきあいがあるわけですね。
坂田:個人的には、いい出会いもたくさんあり、おつきあいが今でも続いている方も大勢います。例えば、これは青山からのおつきあいですが酒屋の「ミツミ」さんの田口さん、彼はワインの輸入免許をお持ちなんです。青山当時お店も小さいからそんなに沢山のワインを入れられるわけではなく、いろいろ教わりながら、一生懸命勉強しました。
ワインのことのみならず、例えば北海道のホワイトアスパラガス畑のオーナーさんを紹介してもらったりと、本当にいい出会いだったと思います。

 

グルたま:お店のワインセラーも、おしゃれな上にとても存在感もあって、お店の内装にぴったりですが、坂田さんはどんなワインがお好きなんですか?
坂田:合うものだったらなんでも好きですね。
そうそうかつてブルゴーニュに買い付けに行ったことがありました。一週間毎日、午前1カ所と午後1カ所、ドメーヌをまわってテイスティングをしまくりました。樽に入った若いワインはタンニンが強く、舌が痺れてきてしまうほどです。しかも午後に別のドメーヌに回ることを知っている午前のドメーヌは、お昼に沢山飲ませて交渉に持ち込もうという作戦で十種類くらいのテイスティングで参ってしまいます。

 

グルたま:成果はいかがでしたか?
坂田:良いワインを買い付けられましたよ。その証拠にレストランでは今でもそのワインはリストからはずれていませんでした、ちょっと嬉しいですね。

 

 

 

3.こだわりの逸品
レシピはダブルスープといって手の込んだ料理です。

 

グルたま:恒例のこだわりの逸品ですが…。
坂田:今回はこちらをご用意しました。

このトマトをご覧ください。水切りといって水をほとんどやらない作り方です。トマトはもともとアンデス原産ですが、アンデスという土地は雨が少なく昼夜の温度差も半端じゃない厳しい環境です。この状態に近づけて先祖帰りとでも言いましょうか、植物の生きる力を最大限に引き出してやることによって、皮は固くなりますがとても甘いトマトになるんです。この農法は粘りとがんばりが必要で、みんな途中で我慢できずに水をやってしまうんですね。きちんと実践している農家はごくわずかだと思います。これは静岡の石山さんの作ったものですが、季節的には梅雨で終わりで、このあと北海道のものが入ります。
それからジュレはブログにも載せていますが熊本産の馬のすね肉を使ったコンソメです。レシピはダブルスープといって手の込んだ料理です。
まず筋と野菜、骨を8時間煮込んで1番スープをとります。それを漉して次の日すね肉のミンチと野菜・卵白で煮込み澄ませます。作る工程が2階になるのでダブルスープと呼ばれています。

 

グルたま:お話の中で素材の産地をおっしゃっていますが、いろいろなところから入手されているんですか?
坂田:そうですね…長崎や萩の朝セリに出たものは手に入ります。明石浦の漁港では入札権を持っていますし、イワガキは大船渡産のが大きくていいですね。

 

グルたま:いくつかの産地を試されたんですか?
坂田:例えば鮎はいろいろな川のものを試してみました。その中で奈良の鮎がよかったので使っていました。先月は長良川の鮎でした。
岩手県の農業は力が入っていると思います、こちらとはつながりがあるのでいい素材を優先的に使えます。
熊本にも視察に行きましたが、法人化していて優秀な農家が多いと思いました。

 

グルたま:お話がつきませんね、素材の魔術師といった感じですね。
坂田:自分でも作っているんですよ、作り酒屋の麹を取り寄せて塩に凝ってみそを作りました。梅酒もやってます。今は発酵食品にはまっています。

 

グルたま:食の部分でそんなにいろいろなさっているのにブログの更新もマメですね。
他にご趣味はあるんですか?

坂田:じつはお客様に紹介されたんですが、文楽振興のNPOに参加しています。文楽はオペラと同じで美しい旋律の陰に隠された猥雑な歌詞がたまらないですね。そして両者ともテーマは不倫、恋愛、宗教、戦争…共通点が多いんです。

 

シュバリエ・デュ・タストフロマージュ「フランスチーズ鑑評騎士」グルたま:料理だけではなく、多方面に熱中できるものをもっていると、視野が広がりますし、懐が深くなりますよね。ブログを拝見しても、いろいろなことにチャレンジしているし、このパワーには脱帽です。ところで、この額縁に入っているものはなんですか?
坂田:シュバリエ・デュ・タストフロマージュ「フランスチーズ鑑評騎士」です。

 

 グルたま:すごい!初めて拝見しました。そういえば、坂田さんの名刺には、シュバリエ・デュ・タストフロマージュという肩書きが入っていらっしゃいますね。これを拝見させていただくだけでも、一見の価値があります。感激しました!
本当に坂田さんとお話しをしていると、料理にこだわらず、いろいろなことに精力的に、良い意味で貪欲に向き合っているので、お話しが尽きないですね。
今日は盛りだくさんのお話しをありがとうございました。

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