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銀座の心意気が守り抜く、江戸前鮨の名店~寿司処「銀座ほかけ」~

 

  「江戸前」という言葉の意味は、大きく分けて二つある、と思われます。一つは産地として「江戸湾=将軍様のお膝元の海で取れた魚介である」ということ。 もうひとつは、技・作法など、江戸風・江戸好みのやり方を守っている、ということ。

 

 寿司処「銀座ほかけ」の創業は昭和12年、戦前は三田の慶応義塾大学の近くにありました。 昭和23年に銀座に移転、以来60余年、多くの江戸前鮨ファンに愛されて来たお店です。 当代の矢崎桂さんは名古屋で修行の後、昭和35年に「ほかけ」に入店、鮨職人としての卓抜した腕を買われて3代目を継いだ方です。

 

 江戸前鮨ファンが「奇跡」「神技」と絶賛するコハダを始め、〆る、煮る、漬け込む、という伝統の料理の仕方に独自の工夫を加えて現在のスタイルと味を築き上げた矢崎さん、三年前に「三越裏再開発計画」によって、元の場所の閉店移転を余儀なくされたときに、一度は引退を考えられたとか。
 何十年も通い続けるファンの惜しむ声や懇願を受け、一人娘の馨子(けいこ)さんは、移転先探しに必死になります。
「ほんとにもう、そのときには“(創業者の)曾お祖父ちゃまが降りてきた”のだと思いました。父が心のままに仕事のできる、そして愛してくださるお客様に安心して来ていただける場所を探し続けてほぼ一年」
なんと!組合事務所のある銀料ビルの一階に、新しい店舗ができることに
なったのです。再オープンは2008年2月。 
 人と場所のご縁というものを感じないではいられません。

 

 木曽檜の一枚板のカウンターの上には、こちらも元のお店から無事に引っ越してきた、庇と短い暖簾の下がった屋根、これはもともと鮨が屋台で出されていた江戸時代の名残を表現したものだとか。
カウンター9席と、奥に4人入れる小上がりのみ。
料理人の目と仕事の行きとどく、心地よい空間です。
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★今回ご紹介のふぐ「鳴門」の矢向さん:
 「鮨屋というのはもちろん、銀座の飲食店の代表的な業態です。
でも最近は、その鮨屋も含めてすべての店が、みんな同じような『料理屋志向』になっているのではないか・・つまり、お任せのコースを頼んで黙っていれば、季節のオススメ、亭主のこだわり、全部が供される、それをひととおり味わえば良い、という。肝心なお鮨は、ひとつふたつしか食べられない。 これは、お客様の世代が若くなり、伝統の料理を味わい慣れていない人が増えたことにもよります。特に鮨屋はカウンターを挟んで対面で会話もしながら、好きなものを食べるのが楽しいという料理文化なんですが、『ほかけ』さんでは、まさにその伝統をこころゆくまで味わえるんですよ。
それもほんとうに家庭的な和やかな雰囲気の中で。」

 

 素晴らしい腕と技を持った職人は、まさに銀座の、文化の宝物です。
ですが、その職人自身が、優秀な経営者であったり、プロデューサーに恵まれるかどうか、はまた別の話の場合も多くあると思います。
 「ほかけ」さんの場合は、お父様の一番のファンであり、優れたプロデューサーである馨子さんの活躍でまさに銀座の名店が守られた、うれしいケースと言えるでしょう。

 

矢崎「新しい店をやってみてね、ホントに良かった。昔からのお客さんもみんな喜んでくれますしね。」
 名物鮨屋といえば、偏屈な親父がコワイ顔をして握っていて「プロの仕事だ、黙って食え!(失礼)」と言わんばかりの勘違いなお店もあるとか。
 小柄で柔和な表情の矢崎さんは、まったく対極の雰囲気の親方です。接客を一手に仕切る馨子さんも
「二人ともお酒好きなんですよ~。冷たいビールをお客様に勧められるとついつい・・・エヘヘ」
 こんなおふたりがもてなしてくださる店内は、たとえ初めてでも楽しいに決まっていますよね。
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 著名な粋筋の方々も数多く贔屓にした「ほかけ」さん、
(棟方志功氏の色紙写真)
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  コンパクトになった店内では、「とにかく一通りのコースを2時間以上かけて食べたい!お金は払う!」という食べ方は、実はあまり粋ではありません。
 参考その①
故・志ん朝さんは、大のコハダ好き、しょっちゅう通ってはコハダと何種類かの好物を

パクパクと食べて、お酒も一本か二本、「ご馳走さん」と何千円かで出て行かれるスタイル。
 ちなみに「ほかけ」さんの握りは、一口分もないような小さなシャリではありません。しっかりご飯を食べられる、これも江戸風のもの。卵焼きにもたっぷり詰めるので、こぼれないように「はい!」とひっくり返して出してくださるのです。  万事に上品ぶることをなさいません。

 

 質問:・・・小さいころからたくさん美味しいお鮨が食べられたんでしょう?うらやましいな~
馨「いえいえ、酢飯はたくさん食べましたけど・・(笑)特別な日に作ってもらえる父のお鮨が、イカや明石のタコとか赤身とか、それがしみじみとおいしかったですね。」
矢「あと、大人になってからは〆たもんが好きになったね」
・・・そうですかあ、じゃあ、お勧めの一品を・・・
馨「あ!お父さん、ばらちらし! 雛祭りのときに、大きな飯台に作ってもらって、みんなで取り分けて食べるのが、子供心に最高の楽しみでした。蛤のお吸い物と一緒に・・・」
 オーダーを受けていそいそと取りかかる矢崎さんの手際の良さ!
アナゴ、シイタケ、エビ、オボロ・・・それぞれにていねいな仕事がされた食材満載の「ばらちらし」dsc003751

馨「4月の歌舞伎座の最終公演の桟敷を母に取ってもらって、これをお弁当に、至福のひとときを過ごしました。」  それはまさに贅沢以上!要ご予約;昼も夜も¥4,000です。ぜひ、この器でお持ちになって、

味わってください。

「容れ物はあとでお返しいただければいいので」

 

 いや~、これぞ江戸前のお鮨を堪能させていただきました。
ところで、ご主人の「味の原点」は?
矢「う~~ん、食材も調味料もないような時代に育ったからね~。修行時代は、夏はそうめん、

冬はひもかわ(名古屋だけにきしめん)もう麺類は一生分食べましたね」
・・わかりました。麺食いではいらっしゃらない、ということで。
では、好物は?
「ぼくは肉が好きです!」
馨「即答でしたね(一同爆笑)」

 

 子供の頃から好きだったもの、長じて好きになったもの・・・人の味覚はさまざまです。質の良いもの悪いものは、もちろんわかったほうがいい。でも、過剰な情報に惑わされたり、人まねをしたりしないで、

美味しいと思うものを楽しい雰囲気で食べてこそ幸せ、そしてそのことが食文化。

 雑誌やネット検索は、これまでなかった縁をつないでくれる可能性を持つ、ほんとうに画期的なツールです。でも、かじりついてばかりいないで、自分の触角にひらめいた扉を思い切って開けて、そしてとことん味わってみてはいかがでしょう? 基本的なアプローチで。
 銀座のちゃんとした大人は、シンプルにして最良のスタイルを、間違いなくアドバイスしてくれますよ。
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