銀座料理飲食業組合連合会の恒例行事、今年の生産地を訪ねる視察研修会は、
9月3日から4日にかけて熊本県に足を運びました。
超大型台風12号の影響で、開催も危ぶまれた視察研修会でしたが、 台風を横目に見ながら、18名は無事「福岡空港」に到着。 ここから、JR博多駅に移動。駅ビル内のレストラン街「くうてん」が話題と聞き、駆け足で繁盛店を覘いた後、九州新幹線「さくら」に乗ること約30分で、今回の視察地の玄関「熊本駅」に到着。 |
まずは、バスに乗り込み、熊本城へ。
日本三名城の一つと数えられる熊本城は、
加藤清正が礎を築き、細川家によって「文」「武」が栄え、
今もなお熊本のシンボルとして広く親しまれています。
平成20年には、西南戦争で焼失した「本丸御殿」が復元され、 大名文化の粋を集めた絢爛豪華な世界に見入りました。 昼食は、ここでしか味わえないという「本丸御膳」を体験。 これは、約200年前の熊本藩に由来する飲食物製法書「料理方秘」などをもとに、 往時の本膳料理を参考にして再現し、現代人の嗜好に合わせたもの。 熊本城へ来たなら、おススメのお食事です。 |
バスに乗っていよいよ最初の視察地へ。
熊本市のお隣り、嘉島町で天然記念物に指定されている 希少な淡水藻の一種「水前寺のり」を養殖している、 丹生慶次郎(たんせい けいじろう)さんの養殖池を見学。 一時は“絶滅の危機”に瀕した水前寺のりを守るため、 さまざまな文献や記事を独自に分析しながら日々模索しているという丹生さん。 |
たゆまぬ苦労が実を結び、養殖が軌道に乗ると、
水前寺のりの美味しさを多くの人に知ってもらいたいと、地元の郷土料理店や学校給食にも紹介。
我々も試食しましたが、しっかりした食感とさわやかな緑色は、
和食のみならず洋食のアクセントやパスタに練りこむなど、様々なアイデアが膨らむようです。
次に向かったのは、熊本の特産品「馬刺し」を取り扱う「千興ファーム」です。
ここは、おいしい馬刺し、安全で健康な馬刺しを生産するために、 日本唯一の馬肉の一貫した生肉生産ラインと衛生管理を誇る工場を設置。 「と畜から出荷まで一歩も外に出ない」フルライン設備により、 生食用の肉としては世界初の“SQF2000/HACCP”の認定を受けています。 馬肉は加藤清正の時代から薬膳料理として食べられていたという歴史のある食べ物と言われています。 馬刺しを守ることは、熊本の食文化を守ること。守り続けることが使命という熱意に感じ入りました。 |
この後向かうのは、「熊本の食材紹介会」の会場となる熊本県産業技術センターへ。
ここでは、熊本の豊かな食材を我々に紹介するために、肉・野菜・海産物をはじめ、加工品や焼酎、日本酒など実に44社の団体の方がお集まり下さり、熊本県のおいしい味を紹介いただきました。
その他「くまもとふるさと食の名人」の皆さんによる郷土料理紹介もあり、熊本の味を堪能しました。
2日目の朝は、ホテルで朝食を取り、8:00集合、バスに揺られること約1時間余り。
最初の視察地は、南阿蘇の麓に広がる高森町。
ここは、阿蘇から滾々と湧き出る伏流水のおかげで、 ミネラルをタップリ含んだ豊かな土壌から、美味しく健康的な野菜の宝庫でもあります。 「ヒゴムラサキ」はこの高森町の地域特産野菜である熊本長なす(通称:赤ナス)を品種改良してできたもの。 ナス特有のアクがなく、種が少なく、生でも食べられます。 また形はジャンボなすで、通常の約3~4倍はあります。 |
唯一の欠点は、ナスに角が出やすいこと。
角も愛嬌ですが、この欠点を生かして、さらに名物野菜として広まることを願います。
そして、最後の視察地「あか牛」のふるさとへと向かいました。 あか牛は、「褐毛(あかげ)和種」という和牛4品種のうちのひとつで、熊本県で誕生しました。 あか牛は、生まれてから3ヶ月ごろになるとお母さん牛と一緒に放牧に出されます。 草原の中の牧草をいっぱい食べることによって胃袋も大きくなり、体も丈夫に育つそうです。 また、この放牧によって、きれいで雄大な阿蘇の草原を守るという大事な役目を持っているといいます。 あいにくの雨模様で、阿蘇の雄大な自然もかすんでしまいましたが、 雨の降りしきる中、放牧の様子を見学し、自然と共存する阿蘇の恵みたちに感激しました。 |
そして昼食は、このあか牛のいろいろな部位を焼き肉で食べ比べ。 無駄な脂肪が少なく、和牛本来の赤身のうまみがギュッと詰まった、 それはもう口の中で凝縮された美味しさが広がってきます。 健康志向が高まっている今だからこそ、おいしく、ヘルシーで、ジューシーな「あか牛」が これからはますます評価されることだろうと思います。 |
「火の国」熊本は、「水の国」でもあり、海の幸・山の幸が豊富な「食の都」でもあります。 今回の視察研修会では、環境や自然と調和しながら、 真摯に取り組む生産者の食材を間近で見ることが出来たのは、良い勉強になりました。 そして、この、安全でおいしい食材をより多くの人に知っていただき、食べていただきたいと 気持ちを新たにしました。